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【映画レビュー】犯罪は条件反射で抑止できるのか? 時計じかけのオレンジ スタンリー・キューブリック 監督


時計じかけのオレンジ [ マルコム・マクダウェル ]

 

 

 

オススメ度:★★☆☆☆

 

ジャンル:社会風刺/政治批判

 

 

 

この作品を見たきっかけ

2001年宇宙の旅、シャイニングに続きスタンリー・キューブリック作品に興味が出たこと、2001年宇宙の旅の解説を書いたことでふと思い出し、レビューついでに観てみようと思ったのがきっかけ。

上にもある通り主人公の顔がなんとも不気味でなかなか手が出なかった作品。

 

大まかな解説<ネタバレあり>

大まかにいうと、社会に振り回される青年の喜劇的作品

この映画は終始主人公のナレーションで進行します。過去を振り返った回想という感じですね。

性と暴力、薬物に溺れる15歳の青年が仲間に足をすくわれ刑務所で罰を受け、特別な精神治療(ルドヴィコ療法)を受けて予定より早く出所できたものの、今まで関わってきた人からも報復され、自殺を図るも死ねずに最後には政府の管理下に置かれることになる。(本人的には申し分ない生活である様子)

 

軽くいうとこんな感じなのですが、観ていて重たく感じることがほとんど無く、喜劇的な演技表現であるのが幸いして辛さは全く感じませんでした。

 

性的内容と暴力シーンは多いものの・・・

序盤のやりたい放題を尽くすシーンではレイプ、リンチ、喧嘩などが次々と出てくるのですが、女性の丸裸は出てくるものの、実際のエログロシーンは出てこないので現代作品に比べれば全然ショッキングではないんですよね。

 

しかし、当時は何年も上映禁止になる程の反響があったらしく、R指定の上のX指定(17際未満閲覧禁止)がされていたこともあるとか。

1970年代当時はかなり物議を醸した作品の様です。

 

「時計仕掛け」は精神治療×2で時計が一周した。もしくは、完全に管理社会の餌食になったことへのメタファーなのか?

 題名の「時計仕掛けの」という言葉の意味は諸説ある様なのですが、例えば

食べ物であるオレンジを機械にしてしまったらそれはもうオレンジとは言えない全く別物だ=主人公は精神治療の効果や政府に管理されることにより全く違う人間になってしまったのでは、という解釈や

 

時計をこの映画の展開に当てはめて「やりたい放題」→「完全な抑制」→「やりたい放題」と24時間経過、時計が一周回って元に戻ったという解釈もある様です。

 

作中オレンジも時計も特に出てこないので、ストーリー的な意味合いがあるんだと思いますが、一通り映画を見終わってから今一度考えてみると面白いと思います。

 

 

 

作品を見て感じたこと

キューブリックならではの無機物に対する映像美が、人間の汚さを助長する

今回も安定の映像美、圧巻でした。

作中何度か出てくるミルクバーは、テーブルやオブジェが女性の裸のマネキンで、映像が完全な左右対称のシーンによく映えていました。

そして登場人物の衣装も全身真っ白で、帽子だけが黒、というその背景にマッチする様な映像で、このシーンはポスターで欲しいと思ったレベルです。

 

また作家の自宅に押し入った時のインテリア、主人公の自宅などいちいちキマった背景が、すごくかっこいいんです。

その背景の手前で動くキャラクターの演技があえてチープであることでよりコントラストの効いた映像になっていました。

 

ルドヴィコ治療のシーンではまぶたが閉じられない様に器具で目を強制的に開ける様にするのですが、無機物な機械と、主人公の目玉が生身感を助長し衝撃的な画になっていました。

 

近未来の時系列ではあるものの、別次元のお話?

舞台は近未来ということなのですが、作中の麻薬入り牛乳を振る舞う「ミルクバー」や、キャラクターの異質すぎる服装や髪型、独特の若者言葉「ナッドサット言葉」、精神治療の「ルドヴィコ療法」の信ぴょう性などから別次元の世界の話なのではないかな、と感じさせます。

 

所々でナチスの映像や衣装が目に入ったり、キリスト教についてのシーンがあったり、今の世界に共通する表現もあるので、多元宇宙的な世界(今住んでいる世界と似ているけれど少し違う世界)と考えてみるとまた違った面白さがありますよ。

 

結局精神状態は変わっていないんだよね・・・?

ルドヴィコ治療によって主人公は性と暴力の自主的行為を行おうとすると吐き気と苦痛に襲われる様になり、また治療中たまたまかかっていた主人公が大好きな曲を聞くと死にたくなるという状態になります。

しかしこれはあくまでも条件反射的な治療なので、主人公の基本的な精神状態は変わっていないんですね。

 

実際に実験成果をお披露目するシーンでも女性の裸に手を伸ばしそうになったりしていますし、殴り返したいけど吐き気に耐えるくらいなら殴られた方がマシというナレーションから本当はやり返したいと思っていることがわかります。(多少の精神的抑制もあるとは思います。)

結局人間の反射だけを完全に操っている状況で、犯罪率は抑止できるかもしれないが根本治療になっていないのでは?という疑問が残りました。

 

実際に、出所後仕返しをされて自殺未遂をして入院した病院では回復治療を行うのですが、そこではすぐにこの反射は回復し、元の主人公に戻った様に見受けられました。

その後、最初にルドヴィコ治療を提案した博士がやってきて主人公に甘い言葉(このまま主人公に死なれると自分の立場がなくなるので「今後一生何不自由ない世話をするから世論操作に協力しないか」ということを言った)を掛けられ、その時の主人公の顔は最初のシーンで見た凶悪な顔に戻っていました

 

 

 

どんな人に向いているか

レトロ好き、性暴力に嫌悪がない人、スタンリーキューブリック好き、現代美術好きにはオススメです。 

ただ、本作は社会風刺や政治批判要素がかなり強いので、好き嫌いが分かれやすい作品だと思います。

 

 

 

監督の他の作品


【中古】 シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン /スタンリー・キューブリック(監督),ジャック・ニコルソン,シェリー・デュヴァル 【中古】afb

 

レディープレイヤーワンにネタとして結構大きめの枠を使っていると聞いて見たのがこの作品。

人里離れたホテルの管理を冬の間受け持つことになった一家が、不気味なホテルでとんでもないことになる作品。

この猟奇的な写真は誰もが見た事のあるパッケージだと思います。

 

ホテルの薄気味悪さ、謎のキャラクター、だんだんと狂っていく主人公。

ここでも映像美は健在です。双子ちゃん可愛い。

 


 


2001年宇宙の旅決定版 (ハヤカワ文庫) [ アーサー・チャールズ・クラーク ]

 

私はキューブリック監督に出会った初めての作品。

初回は最初から最後まで「?????」となって解説を見まくってようやく事の顛末かわかり、神映画だと思った経緯があります。

 

何と言っても1960年代に撮影されたとは思えないほど美しい宇宙の表現、CGを全く使っていないのにここまでできるのか!と感心すると思います。

当時人類が宇宙や未来技術に対して思い描いた幻想をそのまま映画化した様な、これこそSFと言った内容になっています。

 

解説記事はこちらへ

 

zerounisan.hatenablog.com

 

 

 

この作品が観れるのは

U-NEXT、Hulu、アマゾンプライムビデオです。 

 

ネタバレありのYoutube解説動画

 

守鍬 刈雄(すぐわ かるお)さん

この方は映像をそのまんま言葉にして解説してくれる方で、画面にメモをしながら話をするのですが、ラジオ感覚で音声だけ聞いていても十分面白いです。

 

この方はルドヴィコ治療に関して治療を受けた成果がまるで「日本人」の様だと表現していました。

社会に監視されて生きている様な、やりたいことを抑制して生きているという様な感じですかね。

 

 


 

岡田斗司夫さん

 

本作については33:10〜

ガイナックスの社長さん。豊富な知識をもとに色々な雑談を踏まえて解説を行ってくれる方です。

この回ではいくつかの作品を紹介しているので、気になる作品があれば通しで見て見てくださいね。

なお、ニコニコ有料会員の方は裏放送で「2001年宇宙の旅」の解説も見ることが可能です。こちらもかなり面白いですよ。

 

 

 

 

前の記事

 

zerounisan.hatenablog.com

 

 

【映画レビュー】考えるな、感じろ・・・ 2001年宇宙の旅 スタンリー・キューブリック監督 アーサー・C・クラーク著


ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 2001年宇宙の旅 【DVD】

 

 

オススメ度:★★★★☆

ジャンル:SF

 

 

 

この作品を見たきっかけ

SFといえば2001年宇宙の旅、と前々から各メディアでチェックはしていたものの、古すぎて最近まで観る気がしなかった作品。

去年、たまたま契約しているAmazonプライムビデオで見れるようになっていたので気軽に再生ボタンを押したのです。

始まりからラストまで、今まで感じたことの無い衝撃を受けることになるとはこの時はまだ思ってすらいませんでした。

 

 

大まかな解説<ネタバレあり>

2001年宇宙の旅は、ズバリSF美術映画

ストーリーは一回見ただけではまるで理解が出来ませんが、それでも画面に釘付けになってしまうのは、監督の究極的なセンスと画のこだわりがあってこそでしょう。

 

この映画は大変長い作品で、休憩を含めて2時間44分あります。

 

作りとしては3部構成になっています。

 


三部構成の内容 

1.人類の夜明け

絶滅しかけていた猿人が、木星からの「モノリス」によって「武器を使って敵を倒す」という知性を得る。

時代は変わって2001年、高度な文明を得た人類は月で発見された「モノリス」の導きによって木星に向かうことに

 

2.木星使節

少しずつ人間のような意志を持ち、混乱の中船員を次々に殺めていく「HAL9000

なんとか生き残ったは船長だけ。船員には知らされていなかった本当のミッションが発覚し、たった一人の船員を乗せて木星へと進む宇宙船。

 

3.木星 そして無限の宇宙の彼方へ

木星にたどり着くと同時に世界の理を一気に見せられた船長。

ようやく地上が見え、降立とうとするとすでに宇宙船は高級そうな豪邸に着陸していた。

またしても「モノリス」の導きによって宇宙の概念的存在となった船長は、「スターチャイルド」として地球に戻って来る。


 

 

 物語が賛否両論なワケ

この作品が「難解」と言われる理由についてですが、結論から言うと「説明が一切ない」からです。

当初は、きちんと各シーンに対し解説などが施されていたのですが、スタンリー・キューブリック監督が解説を挟むことにより映像美と、独特のミステリアスな雰囲気がなくなる、とか解説を入れることによりそれぞれの解釈で見てもらえなくなる可能性から全ての解説をカットされています。

 

というか、解説無しで3時間近くあるのに、解説を入れたらどれだけ長くなってしまうのか笑

 

難解とされたストーリー部分については公開とほぼ同時に発売された小説を読むことで解消されるようになっているようです。(もしくは解説サイトや動画を確認)

 

恐ろしいほど美しい映像

この映画の見所はなんといってもCG技術の全くないこの時代(1960年代)に現代でも十分通用するような美しい情景が多数見られること。

宇宙船、船内のデザイン、船外活動用ポッドなど現代で使用しても全く不自然でない物がたくさん出てきます。

SF好きにはワクワクが止まらない映画です。

 

なお、この映画に出てくる宇宙食NASAが実際に開発していたり、登場するコンピューターの設定や画面はIBMが協力をしていたりと、その時代の最先端をゆく企業が力を注いだこともあってよりリアルに、精巧な宇宙空間が演出されています。

 

 

驚愕ポイント

まず最初の20分、人間が一切出てきません。(言葉すら出てこない)

 

あれ、見る映画間違えたかな?と思ってもとりあえず30分耐えてください笑

最初はアフリカのようなシーンなのですが、監督が大の飛行機嫌いでアフリカに行くことができず、スタッフをアフリカに派遣して風景写真を撮って持ち帰らせ、わざわざ巨大なセットを作ってから映画の撮影を行ったとか笑

よく見て見ると確かに背景はスクリーンに映しているので若干ぼやけていたりします。

そこも踏まえて映像をチェックすると序盤20分も結構楽しいですよ!

 

SF~・・・SFはどこだ~・・・と禁断症状が出始めたあたりで、超有名なあの曲(ツァラトゥストラはかく語りき)が流れて、SF世界に移り変わります。

 

時代があまりにも一気に変わるので別の映画を見ている気分になると思います。

先ほども書きましたがここで登場する機械やインテリア、iPadのようなものまで現代にも通用するようなもので大変驚きました。

本人確認は声紋認証ってところも最近話題のSiriやアレクサなどを彷彿とさせますね。

 

宇宙船や船外活動で宇宙服とヘルメットを着用しているシーンではヘルメットの中で聞こえる船員の息遣いと、酸素ボンベから空気が送り込まれる音がBGMになっていて緊張感がダイレクトに伝わって来たり、宇宙のシーンでは「空気がない」という演出で無音になったり、かと思えば不穏な人の声(「うぅ〜」という声が何重にも重なったような声)や不協和音っぽい音楽?はやたらと音量が大きくて映像の美しさも相まって不安になったり。

気落ちしているときに見ると頭がおかしくなるかもしれないので気をつけて下さいね。

 

後半の木星にたどり着いた際の世界演出では、人間世界から高度な木星人世界の概念的なものを一気に見せられるシーンがあるのですが、BGMも合わさって若干PSの有名ゲーム「LSD」や「ゆめにっき」的な不気味さを感じさせます。

インターステラー」も似たような場面がありましたね。(5次元の世界に行く時の描写)

 

 

 

作品を見て感じたこと

自分の目を信じてとりあえず一回見るのがオススメ

この作品で出てくるHAL9000という宇宙船内蔵のAI(人工知能)がいるのですが、このAIが命じられた命令と実際の職務との間に起きる矛盾に苦悩し、混乱し、「死にたくない」という意志から人間にとって大変恐ろしい展開になる訳ですが、これは2018年に発売されたDetroit BecomeHumanにも通ずる切なさがあり、AIに対し同情を覚えました。

 

 また、人類は自らの能力で進化してきたのではなく、宇宙人(異星の生命体)によって強制的に進化させられてきた、宇宙人の繁栄の為に進化したという設定が本作でよく活かされており、宇宙人の存在は画として全く出てこないのにたまに出て来る「モノリス」という黒い物体だけでかなり大きな存在としてそこにいるという感覚が映像から伝わるというのが物凄い技術だと思いました。

 

この映画、まずは1回頭を空っぽにして見て欲しいです。

その上で「?????」となった頭を解説動画やWebページで補っていき、2周目の鑑賞で全部腑に落ちて「あ~!こういうことか」となって欲しいです。(絶対もう一度見たくなる。)

解説が必須の映画ではありますが、最初の視聴で受けた衝撃は、恐らく一生頭に残るでしょう。

 

どんな人に向いているか

SF好き、スタンリー・キューブリック好き、オカルト好き、美術好き、動画制作関係に興味がある方は3時間あっても見ていて苦にならないと思います。

無重力の表現、人工知能との会話シーン、宇宙生命体の表現は目を見張るものがありますよ!

 

 

監督の他の作品

スタンリー・キューブリック監督はかなり有名な映画をいくつか制作しています。

 


ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 時計じかけのオレンジ 【DVD】

 

この題名は誰もが一度は聞いた事が有るのではないでしょうか。

私は内容の解説しか見ていないので実際の映像は未視聴なのですが、内容的には本能的に生きることと、理性的(社会に管理されている理性)に生きることの対比を描いている作品。

内容的には結構過激で風刺的なのですが、出て来る映像の印象が重たくないので見やすい作品のようです。

近々視聴したら感想を記載しますね。

 

2019/2/24

早速視聴したのですが、解説通り確かにグロテクスな表現や過度に性的な表現はありませんでした。

キューブリックらしい美しい映像に、人間の汚さが相まって大変コントラストの効いた社会風刺映画だと思いました。

結局、汚さで世界は回っているのだ、ということを痛烈に表現した作品。あとおっぱい映画。

 

 


【中古】 シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン /スタンリー・キューブリック(監督),ジャック・ニコルソン,シェリー・デュヴァル 【中古】afb

 

レディープレイヤーワンにネタとして結構大きめの枠を使っていると聞いて見たのがこの作品。

人里離れたホテルの管理を冬の間受け持つことになった一家が、不気味なホテルでとんでもないことになる作品。

この猟奇的な写真は誰もが見た事のあるパッケージだと思います。

 

ホテルの薄気味悪さ、謎のキャラクター、だんだんと狂っていく主人公。

ここでも映像美は健在です。双子ちゃん可愛い。

 

 

この作品が見れるサイト

2001年宇宙の旅が見れるのはアマゾンプライムビデオとHuluです。

 

 

 

ネタバレありのYouTube解説動画

有名な映画だけあって解説動画も幾つかあるのですが、中でも私の気に入っているわかりやすい解説動画をご紹介しますので、もし気になったら見てみてくださいね。(長いのでお時間のある時にどうぞ)

 

 

守鍬 刈雄(すぐわ かるお)さん

この方は映像をそのまんま言葉にして解説してくれる方で、画面にメモをしながら話をするのですが、ラジオ感覚で音声だけ聞いていても十分面白いです。

ほかの作品では映画を一本観れてしまうほどボリュームのある解説もされているのですが、2001年宇宙の旅に関しては30分ほどの解説になっています。

投稿動画にはスタンリーキューブリックの他作品の解説や、手書き紙芝居解説などもあるのでよろしければ観てみてくださいね。

 

 

岡田斗司夫さん

ガイナックスの社長さん。豊富な知識をもとに色々な雑談を踏まえて解説を行ってくれる方です。

この動画では裏放送(ニコニコチャンネル会員限定動画/有料)でしか2001年宇宙の旅の詳しい解説が見れないのですが、他のキューブリック作品の解説はこのままユーチューブで観れるので気になったらぜひどうぞ。

 

【小説レビュー】普通だと思っていたあの人も・・・ ポイズンドーター・ホーリーマザー 湊かなえ著


ポイズンドーター・ホーリーマザー (光文社文庫) [ 湊かなえ ]

 

  

オススメ度:★★★★☆

ジャンル:オムニバス(ミステリー要素有り)

 

 

 

 

作品を手に取るきっかけ

 

母が買った小説を私に読むように勧めてくれた、「ポイズンドーター・ホーリーマザー」

 

湊かなえさんの作品は 読んだことがなく、「告白 (双葉文庫) [ 湊かなえ ]」という作品で有名な人だよなーという感覚しか持ち合わせていませんでしたが、今回のこの作品を読んで衝撃を受けます。

 

とにかく、心理や言動描写がリアル。

本当にあったことなのではと思ってしまうくらいの没入感を味わいました。

 

 

本作の大まかな説明/所感

誰もが言葉にせず持っている憎悪をうまく表現した作品

短編オムニバス6編からなる本作は主人公が全て女性で、特に母と娘の関係を描くものが多いです。

1作品ごとの区切りで読めば活字が苦手な方でも比較的読みやすい短編集。

最後の2作品だけは直接繋がっているお話でした。

 

母から見た娘、娘から見た母。

姉妹の待遇の格差、しかし見方を変えればオセロのように関係が一変する。

 

男を汚らわしく扱う描写が多いのも湊さん特有のものなのでしょうか?

二股、不倫、暴力、ストーカーなど、出てくる男性にまともな人が少ししか出てきません笑

それとも本作を「女の心理」メインで書くために敢えてそうしているのかもしれませんね。

 

若干推理小説のような展開や、思わぬ伏線回収があり、大好きな星新一先生を頭の片隅に思い出しながら一気に読み進められました。

読み終わったら嫌な気分になるミステリーをイヤミスと言うようですが、湊さんはその中でも「イヤミスの女王」とよばれているとか。

確かに、爽快な気分には到底なれない読後感でした。

 

文章に関しては口語文が多く、事情聴取シーンが何度か出てくるため話を聞いている感覚で読めて堅苦しい文章が苦手な方にも読みやすいと感じました。

 

また、愛憎劇とまではいかないものの普段覗けないような心の奥底、優しさが毒となる瞬間、親の扶養に入っている子供が「自分一人では生きていけないことが分かっている」からこそ親に逆らえないという部分、さらに子供にしか依存できない親の気持ちまで見えてきて、

自分の過去に類似した点もありかなり心に刺さる作品でした。

 

ちょっと嫌味が多い人や説教型のクレーマー味を感じる

そういえば、登場キャラクターが話したり、思ったりする表現を見ていると思わずクレーマーを思い出してしまいまったんですよね。

自分の意見は正しい、(クレームをつけた)商品の為を思ってやっているんだ。

という発言がそのまま作中に滲み出ているためかと思います。

 

「娘のために、正しいことをしている」

 

「娘の将来を思って、厳しくしなければいけないのだ」

 

そういう気持ちを過剰に持ってしまった母親と、その押し付けに近い気持ちを受け取る娘が湾曲していく様が見ていてなんとも不気味でした。

 

しかしこれ、結構な勢いで人が死ぬ作品ですね。

他のもこんな感じなのかな…?

少年漫画のようにサクサクではなく、それぞれにかなり重い理由が積み重なった上での結果だと把握できるくらい、一人一人のキャラクターに厚みを持たせていることにもこの方のストーリーの作り込みを感じられます。

 

母子家庭や毒親持ちには辛いかも

テーマとして、母子家庭で母親がしっかりしようと思うあまりに心を病んで娘にあたってしまう描写や、毒親(もしくは毒娘)という内容にも遠慮なく強烈にリアルな描写とともに話が進んでいくので、実際にそういう家庭に今いる方に関してはちょっと読んでいて辛いものがあるかもしれません。

 

とにかく心理描写やセリフがリアルで、本当にそこに登場人物が生きて、考えて喋っているような感覚に陥ります。

そこに自分の家庭や家族が重なってくると、読み進めるのがきつく感じる方もいるかもしれませんね。

 

かく言う私も母子家庭、登場人物に思わず自分を重ねてしまうこともありました。

 

母がこの本を勧めてくるのもかなり謎だったのですが、

恐らく母自体もそういうことがあったのでこの気持ちを共有したいということだと思います。

でも、ある意味負の連鎖が続いているようでそれはそれで怖いという笑

 

入門としてのオムニバス小説

私は新しい著者の本を探すとき、複数人で書いているオムニバスをよく買っています。

お試し版というように、いくつかの作者の書籍を短編で試すことにより「自分に合った」作風を事前に把握できるからです。

 

文庫であればそうでもないのですが、ハードカバーで読むには失敗が怖い時もありますよね。

生粋の本好きであれば、ある程度好き嫌いせず読むのだと思うのですが、それでも私は金銭面的に躊躇してしまうことも多いです。

 

今作は1著者のオムニバスではあるものの、例えば著者の作風をずっと読み続けるのが辛い場合でも短編集であれば1作品ずつ区切って読めるので負担が少ない、と考えられます。

 

湊かなえさんについて

元々小説家を目指していたわけではなく、アパレルメーカー→青年海外協力隊でトンガへ→帰国して家庭科教師→結婚し子供が生まれて「自宅でできる新しいこと」として執筆活動を開始、その後数々の賞を取ることになったという方のようです。

 

また、人物描写がしっかりしている点については湊さんが「どんな脇役にでも履歴書を作る」ことを徹底しているようで、履歴書を作ればキャラクターが勝手に動き出すので、その中からストーリーをピックアップして書いているとのこと。

昔から空想好きというのもあって、湊さんの頭の中では人間観察をして、その観察日記を書いているような感覚で執筆しているのかな、と感じました。

 

ゆえにリアルさが際立つのだと。彼女の目の前には実際にキャラクターが存在して、生きているようなものですからね。

 

 他の作品/オムニバス作品

私はまだ湊さんの他の作品を読んだことがないので、私が検索して面白そうだなと思ったもの、あとは今回のようにオムニバスで読みやすそうと感じた作品を紹介いたしますね。

私が買う可能性も高いので、もし今後以下作品を読んだ際には紹介文の投稿とともにここの作品表示も変更したいと思います。

もし興味があれば一緒に読んでみましょう。

 

 


豆の上で眠る (新潮文庫) [ 湊 かなえ ]

 

豆の上で眠る

・長編作品

・ミステリー

・失踪した姉が戻ってきたけど妹だけが本物なのか?と疑問を持つところから始まる

イヤミスならではという作風

 

 

<
望郷 (文春文庫) [ 湊かなえ ]

 

望郷

・オムニバス作品

・6編編成

・ミステリー度は低い

・ドラマ化した

・著者の故郷を舞台にした作品

・人間関係の陰鬱さ描写がすごそう

 

 

 

はじめまして。(自己紹介とブログについて)

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皆様はじめまして、ZER0 と申します。

 

私は元々wordpressの方でも雑記ブログを運営していますが、今回はコンテンツ紹介に特化したブログを作成するためと、はてなブログでの運営も経験したかったのでこちらで始めることとなりました。

 

 

ご紹介ジャンルはプロフィールに記載の通りですが、私自身が大のSF好きというのもあり、宇宙関連の作品が多くなるのかなと思います。

また人類学や社会心理学も結構興味があるのでオススメ作品があればご紹介しますね。

 

皆様にはなるべく分かりやすく、そして楽しんで頂ける記事ををご用意していこうと思っていますのでよろしくお願い致します。

 

 

YouTube紹介記事は埋め込み型を使用し、本や映画はAmazonリンクと今見れるサブスクリプション系サイト(NetflixAmazonプライムビデオ)もご紹介出来たらなと思っています。

 

その人が見てきた作品は、その人へ少なからず影響を与えているものですよね。

ひとまず私が観てきた作品を思い出せる限りまとめてみましたので、気になる作品があればブログの購読をどうぞよろしくお願いします!

※赤字はオススメ度高

 

 

 

 

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視聴済アニメ(途中も含む)

    機動戦士ガンダム

    機動戦士ガンダム逆襲のシャア

    機動戦士ガンダムORIGIN

    機動戦士ガンダムサンダーボルト

    機動戦士Zガンダム

    機動戦士Gガンダム

    機動戦士ガンダムOO(途中)

    機動戦士ガンダムW

    機動戦士ガンダムUC

    機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

    ガンダムさん(入れていいのかなこれ)

 

 

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視聴済映画

 

 

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完読済漫画

 

 

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完読済小説

    ボッコちゃん

    おーいでてこーい

    ようこそ地球さん

    声の網

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    億万ドルの舞台

    異常気象売ります

 

 

 

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完読済実用書

  • 影響力の武器
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  • 金持ち父さん貧乏父さん
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初出掲載:2019年2月16日