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【映画レビュー】犯罪は条件反射で抑止できるのか? 時計じかけのオレンジ スタンリー・キューブリック 監督


時計じかけのオレンジ [ マルコム・マクダウェル ]

 

 

 

オススメ度:★★☆☆☆

 

ジャンル:社会風刺/政治批判

 

 

 

この作品を見たきっかけ

2001年宇宙の旅、シャイニングに続きスタンリー・キューブリック作品に興味が出たこと、2001年宇宙の旅の解説を書いたことでふと思い出し、レビューついでに観てみようと思ったのがきっかけ。

上にもある通り主人公の顔がなんとも不気味でなかなか手が出なかった作品。

 

大まかな解説<ネタバレあり>

大まかにいうと、社会に振り回される青年の喜劇的作品

この映画は終始主人公のナレーションで進行します。過去を振り返った回想という感じですね。

性と暴力、薬物に溺れる15歳の青年が仲間に足をすくわれ刑務所で罰を受け、特別な精神治療(ルドヴィコ療法)を受けて予定より早く出所できたものの、今まで関わってきた人からも報復され、自殺を図るも死ねずに最後には政府の管理下に置かれることになる。(本人的には申し分ない生活である様子)

 

軽くいうとこんな感じなのですが、観ていて重たく感じることがほとんど無く、喜劇的な演技表現であるのが幸いして辛さは全く感じませんでした。

 

性的内容と暴力シーンは多いものの・・・

序盤のやりたい放題を尽くすシーンではレイプ、リンチ、喧嘩などが次々と出てくるのですが、女性の丸裸は出てくるものの、実際のエログロシーンは出てこないので現代作品に比べれば全然ショッキングではないんですよね。

 

しかし、当時は何年も上映禁止になる程の反響があったらしく、R指定の上のX指定(17際未満閲覧禁止)がされていたこともあるとか。

1970年代当時はかなり物議を醸した作品の様です。

 

「時計仕掛け」は精神治療×2で時計が一周した。もしくは、完全に管理社会の餌食になったことへのメタファーなのか?

 題名の「時計仕掛けの」という言葉の意味は諸説ある様なのですが、例えば

食べ物であるオレンジを機械にしてしまったらそれはもうオレンジとは言えない全く別物だ=主人公は精神治療の効果や政府に管理されることにより全く違う人間になってしまったのでは、という解釈や

 

時計をこの映画の展開に当てはめて「やりたい放題」→「完全な抑制」→「やりたい放題」と24時間経過、時計が一周回って元に戻ったという解釈もある様です。

 

作中オレンジも時計も特に出てこないので、ストーリー的な意味合いがあるんだと思いますが、一通り映画を見終わってから今一度考えてみると面白いと思います。

 

 

 

作品を見て感じたこと

キューブリックならではの無機物に対する映像美が、人間の汚さを助長する

今回も安定の映像美、圧巻でした。

作中何度か出てくるミルクバーは、テーブルやオブジェが女性の裸のマネキンで、映像が完全な左右対称のシーンによく映えていました。

そして登場人物の衣装も全身真っ白で、帽子だけが黒、というその背景にマッチする様な映像で、このシーンはポスターで欲しいと思ったレベルです。

 

また作家の自宅に押し入った時のインテリア、主人公の自宅などいちいちキマった背景が、すごくかっこいいんです。

その背景の手前で動くキャラクターの演技があえてチープであることでよりコントラストの効いた映像になっていました。

 

ルドヴィコ治療のシーンではまぶたが閉じられない様に器具で目を強制的に開ける様にするのですが、無機物な機械と、主人公の目玉が生身感を助長し衝撃的な画になっていました。

 

近未来の時系列ではあるものの、別次元のお話?

舞台は近未来ということなのですが、作中の麻薬入り牛乳を振る舞う「ミルクバー」や、キャラクターの異質すぎる服装や髪型、独特の若者言葉「ナッドサット言葉」、精神治療の「ルドヴィコ療法」の信ぴょう性などから別次元の世界の話なのではないかな、と感じさせます。

 

所々でナチスの映像や衣装が目に入ったり、キリスト教についてのシーンがあったり、今の世界に共通する表現もあるので、多元宇宙的な世界(今住んでいる世界と似ているけれど少し違う世界)と考えてみるとまた違った面白さがありますよ。

 

結局精神状態は変わっていないんだよね・・・?

ルドヴィコ治療によって主人公は性と暴力の自主的行為を行おうとすると吐き気と苦痛に襲われる様になり、また治療中たまたまかかっていた主人公が大好きな曲を聞くと死にたくなるという状態になります。

しかしこれはあくまでも条件反射的な治療なので、主人公の基本的な精神状態は変わっていないんですね。

 

実際に実験成果をお披露目するシーンでも女性の裸に手を伸ばしそうになったりしていますし、殴り返したいけど吐き気に耐えるくらいなら殴られた方がマシというナレーションから本当はやり返したいと思っていることがわかります。(多少の精神的抑制もあるとは思います。)

結局人間の反射だけを完全に操っている状況で、犯罪率は抑止できるかもしれないが根本治療になっていないのでは?という疑問が残りました。

 

実際に、出所後仕返しをされて自殺未遂をして入院した病院では回復治療を行うのですが、そこではすぐにこの反射は回復し、元の主人公に戻った様に見受けられました。

その後、最初にルドヴィコ治療を提案した博士がやってきて主人公に甘い言葉(このまま主人公に死なれると自分の立場がなくなるので「今後一生何不自由ない世話をするから世論操作に協力しないか」ということを言った)を掛けられ、その時の主人公の顔は最初のシーンで見た凶悪な顔に戻っていました

 

 

 

どんな人に向いているか

レトロ好き、性暴力に嫌悪がない人、スタンリーキューブリック好き、現代美術好きにはオススメです。 

ただ、本作は社会風刺や政治批判要素がかなり強いので、好き嫌いが分かれやすい作品だと思います。

 

 

 

監督の他の作品


【中古】 シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン /スタンリー・キューブリック(監督),ジャック・ニコルソン,シェリー・デュヴァル 【中古】afb

 

レディープレイヤーワンにネタとして結構大きめの枠を使っていると聞いて見たのがこの作品。

人里離れたホテルの管理を冬の間受け持つことになった一家が、不気味なホテルでとんでもないことになる作品。

この猟奇的な写真は誰もが見た事のあるパッケージだと思います。

 

ホテルの薄気味悪さ、謎のキャラクター、だんだんと狂っていく主人公。

ここでも映像美は健在です。双子ちゃん可愛い。

 


 


2001年宇宙の旅決定版 (ハヤカワ文庫) [ アーサー・チャールズ・クラーク ]

 

私はキューブリック監督に出会った初めての作品。

初回は最初から最後まで「?????」となって解説を見まくってようやく事の顛末かわかり、神映画だと思った経緯があります。

 

何と言っても1960年代に撮影されたとは思えないほど美しい宇宙の表現、CGを全く使っていないのにここまでできるのか!と感心すると思います。

当時人類が宇宙や未来技術に対して思い描いた幻想をそのまま映画化した様な、これこそSFと言った内容になっています。

 

解説記事はこちらへ

 

zerounisan.hatenablog.com

 

 

 

この作品が観れるのは

U-NEXT、Hulu、アマゾンプライムビデオです。 

 

ネタバレありのYoutube解説動画

 

守鍬 刈雄(すぐわ かるお)さん

この方は映像をそのまんま言葉にして解説してくれる方で、画面にメモをしながら話をするのですが、ラジオ感覚で音声だけ聞いていても十分面白いです。

 

この方はルドヴィコ治療に関して治療を受けた成果がまるで「日本人」の様だと表現していました。

社会に監視されて生きている様な、やりたいことを抑制して生きているという様な感じですかね。

 

 


 

岡田斗司夫さん

 

本作については33:10〜

ガイナックスの社長さん。豊富な知識をもとに色々な雑談を踏まえて解説を行ってくれる方です。

この回ではいくつかの作品を紹介しているので、気になる作品があれば通しで見て見てくださいね。

なお、ニコニコ有料会員の方は裏放送で「2001年宇宙の旅」の解説も見ることが可能です。こちらもかなり面白いですよ。

 

 

 

 

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