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【小説レビュー】普通だと思っていたあの人も・・・ ポイズンドーター・ホーリーマザー 湊かなえ著


ポイズンドーター・ホーリーマザー (光文社文庫) [ 湊かなえ ]

 

  

オススメ度:★★★★☆

ジャンル:オムニバス(ミステリー要素有り)

 

 

 

 

作品を手に取るきっかけ

 

母が買った小説を私に読むように勧めてくれた、「ポイズンドーター・ホーリーマザー」

 

湊かなえさんの作品は 読んだことがなく、「告白 (双葉文庫) [ 湊かなえ ]」という作品で有名な人だよなーという感覚しか持ち合わせていませんでしたが、今回のこの作品を読んで衝撃を受けます。

 

とにかく、心理や言動描写がリアル。

本当にあったことなのではと思ってしまうくらいの没入感を味わいました。

 

 

本作の大まかな説明/所感

誰もが言葉にせず持っている憎悪をうまく表現した作品

短編オムニバス6編からなる本作は主人公が全て女性で、特に母と娘の関係を描くものが多いです。

1作品ごとの区切りで読めば活字が苦手な方でも比較的読みやすい短編集。

最後の2作品だけは直接繋がっているお話でした。

 

母から見た娘、娘から見た母。

姉妹の待遇の格差、しかし見方を変えればオセロのように関係が一変する。

 

男を汚らわしく扱う描写が多いのも湊さん特有のものなのでしょうか?

二股、不倫、暴力、ストーカーなど、出てくる男性にまともな人が少ししか出てきません笑

それとも本作を「女の心理」メインで書くために敢えてそうしているのかもしれませんね。

 

若干推理小説のような展開や、思わぬ伏線回収があり、大好きな星新一先生を頭の片隅に思い出しながら一気に読み進められました。

読み終わったら嫌な気分になるミステリーをイヤミスと言うようですが、湊さんはその中でも「イヤミスの女王」とよばれているとか。

確かに、爽快な気分には到底なれない読後感でした。

 

文章に関しては口語文が多く、事情聴取シーンが何度か出てくるため話を聞いている感覚で読めて堅苦しい文章が苦手な方にも読みやすいと感じました。

 

また、愛憎劇とまではいかないものの普段覗けないような心の奥底、優しさが毒となる瞬間、親の扶養に入っている子供が「自分一人では生きていけないことが分かっている」からこそ親に逆らえないという部分、さらに子供にしか依存できない親の気持ちまで見えてきて、

自分の過去に類似した点もありかなり心に刺さる作品でした。

 

ちょっと嫌味が多い人や説教型のクレーマー味を感じる

そういえば、登場キャラクターが話したり、思ったりする表現を見ていると思わずクレーマーを思い出してしまいまったんですよね。

自分の意見は正しい、(クレームをつけた)商品の為を思ってやっているんだ。

という発言がそのまま作中に滲み出ているためかと思います。

 

「娘のために、正しいことをしている」

 

「娘の将来を思って、厳しくしなければいけないのだ」

 

そういう気持ちを過剰に持ってしまった母親と、その押し付けに近い気持ちを受け取る娘が湾曲していく様が見ていてなんとも不気味でした。

 

しかしこれ、結構な勢いで人が死ぬ作品ですね。

他のもこんな感じなのかな…?

少年漫画のようにサクサクではなく、それぞれにかなり重い理由が積み重なった上での結果だと把握できるくらい、一人一人のキャラクターに厚みを持たせていることにもこの方のストーリーの作り込みを感じられます。

 

母子家庭や毒親持ちには辛いかも

テーマとして、母子家庭で母親がしっかりしようと思うあまりに心を病んで娘にあたってしまう描写や、毒親(もしくは毒娘)という内容にも遠慮なく強烈にリアルな描写とともに話が進んでいくので、実際にそういう家庭に今いる方に関してはちょっと読んでいて辛いものがあるかもしれません。

 

とにかく心理描写やセリフがリアルで、本当にそこに登場人物が生きて、考えて喋っているような感覚に陥ります。

そこに自分の家庭や家族が重なってくると、読み進めるのがきつく感じる方もいるかもしれませんね。

 

かく言う私も母子家庭、登場人物に思わず自分を重ねてしまうこともありました。

 

母がこの本を勧めてくるのもかなり謎だったのですが、

恐らく母自体もそういうことがあったのでこの気持ちを共有したいということだと思います。

でも、ある意味負の連鎖が続いているようでそれはそれで怖いという笑

 

入門としてのオムニバス小説

私は新しい著者の本を探すとき、複数人で書いているオムニバスをよく買っています。

お試し版というように、いくつかの作者の書籍を短編で試すことにより「自分に合った」作風を事前に把握できるからです。

 

文庫であればそうでもないのですが、ハードカバーで読むには失敗が怖い時もありますよね。

生粋の本好きであれば、ある程度好き嫌いせず読むのだと思うのですが、それでも私は金銭面的に躊躇してしまうことも多いです。

 

今作は1著者のオムニバスではあるものの、例えば著者の作風をずっと読み続けるのが辛い場合でも短編集であれば1作品ずつ区切って読めるので負担が少ない、と考えられます。

 

湊かなえさんについて

元々小説家を目指していたわけではなく、アパレルメーカー→青年海外協力隊でトンガへ→帰国して家庭科教師→結婚し子供が生まれて「自宅でできる新しいこと」として執筆活動を開始、その後数々の賞を取ることになったという方のようです。

 

また、人物描写がしっかりしている点については湊さんが「どんな脇役にでも履歴書を作る」ことを徹底しているようで、履歴書を作ればキャラクターが勝手に動き出すので、その中からストーリーをピックアップして書いているとのこと。

昔から空想好きというのもあって、湊さんの頭の中では人間観察をして、その観察日記を書いているような感覚で執筆しているのかな、と感じました。

 

ゆえにリアルさが際立つのだと。彼女の目の前には実際にキャラクターが存在して、生きているようなものですからね。

 

 他の作品/オムニバス作品

私はまだ湊さんの他の作品を読んだことがないので、私が検索して面白そうだなと思ったもの、あとは今回のようにオムニバスで読みやすそうと感じた作品を紹介いたしますね。

私が買う可能性も高いので、もし今後以下作品を読んだ際には紹介文の投稿とともにここの作品表示も変更したいと思います。

もし興味があれば一緒に読んでみましょう。

 

 


豆の上で眠る (新潮文庫) [ 湊 かなえ ]

 

豆の上で眠る

・長編作品

・ミステリー

・失踪した姉が戻ってきたけど妹だけが本物なのか?と疑問を持つところから始まる

イヤミスならではという作風

 

 

<
望郷 (文春文庫) [ 湊かなえ ]

 

望郷

・オムニバス作品

・6編編成

・ミステリー度は低い

・ドラマ化した

・著者の故郷を舞台にした作品

・人間関係の陰鬱さ描写がすごそう